究極ではない“最強”のプラキット!ボークス テスタロッサを紹介

06.04.2015 · Category レビュー

 ボークスから、インジェクションプラキット「ATM-FX∞ BERSERGA SSS-X テスタロッサ」がついに先行発売となった。予約済みであった人や、イベントで購入した人はすでに手もとにあり、その全貌を確認していることだろう(一般販売は6月20日なので、まだ予約していない人はこの記事を確認しだい、すぐにボークスへアクセスすることをお勧めする)。

 テスタロッサという機体や原作を知らない人でも、このただならぬ威容に自然と惹きつけられるのではないだろうか。それほどの魅力が、この青い機体にはある。

ATM-FX∞ BERSERGA SSS-X テスタロッサ
価格:11,000円(税別)
ブランド名:Blue Knight × VOLKS
商品形態:インジェクションキット(プラスチック製。一部ポリパーツ、エラストマー樹脂パーツを使用)
スケール:1/24(全高26センチ、頭頂高22.5センチ)
原型製作:造形村
2015年6月20日より一般販売予定
購入はこちら:ボークス 特設ページ

■今回は素組みしたテスタロッサを紹介していく

 テスタロッサはサンライズのTVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』のスピンオフ作品である『青の騎士ベルゼルガ物語』シリーズに登場する主役機のひとつだ。正確には、その最終巻である「絶叫の騎士」で主人公ケイン・マクドガルが乗るワンオフの機体だが、そもそもこの小説の原点は当時、ボトムズ番組スポンサーが発行していた「デュアルマガジン」誌に掲載された短編である。

 メディアミックスやスピンオフといったものが当時まったくなかったわけではないが、「青の騎士ベルゼルガ物語」が持っていたポテンシャル、そして与えたインパクトは凄まじかった。ボトムズという作品がもともと持っていた“バトリング”や“帰還兵”といったキーワードが小説を媒体として爆発的なイメージの発展を遂げ、ボトムズファンの心の中に鋭く、深く“杭”を打ち込んだのである。そう、“パイルバンカー”への強烈な憧憬や想い入れは、この作品で形成されたのだ。

 ホビー誌の後押しもあって、当時のファンはこの作品の立体のイメージをさらに広げることとなる。だが、TVアニメに登場していないということもあって、ファンが手に入れられるものといえばガレージキットだった。大量生産ではなく、また価格も高い。また、当時はその分野自体もまだ黎明期で、流通や製作技術そのものも一般的ではなかった。要するに、ファンなら誰でも入手して完成までこぎ着けられる、といった類いのものではなかったのだ。

 地方のファン、特に年少のファンたちは「いつかテスタロッサの立体を手に入れて自分の手で完成させてみたい」という燻った想いを抱き、そして刻が経った。

 こうした積年の想いを、ついにボークスが叶えてくれる時代がやってきたのは嬉しいことだ。ガレージキット版を経て、なんとインジェクションのプラスチックキットとしてリリースされるという。この報が、どれだけのファンを喜ばせたことだろうか。

 このキットはボークスが全霊を込めて開発したアイテムだ。そのボリューム、完成度、カリスマ性、そして購入しやすく抑えられた価格、すべてが今まさに“伝説”となりつつあると言っても過言ではないだろう。

 今回、マスターファイルブログではそのキット版を紹介するにあたって、あえて“素組み”、しかも付属のデカールも一部のみを用いて仕上げた状態のテスタロッサを紹介することとした。塗装を施せばむろんもっと素晴らしい完成品になることは判っている。だが、テスタロッサに思い入れを抱くファンのすべてが、そのように完璧にこのモデルを仕上げられるとは限らない。

 だが、写真を見てもらえば判るように、素組みでさえこれほどの見映えのするテスタロッサを手にすることができるのだ。30年近くの刻を経て、ここに完成を見たボークス テスタロッサの神髄は、初心者でも充分に満足できるモデルを作り上げた、という点にこそあろう。ファンよ、恐れずに挑戦しよう。究極のテスタロッサがここにある。

 さて、キットの解説に移ろう。本キットは前述のようにインジェクションのプラスチックモデルだ。最近のキャラクターモデルではスタンダードといってもいい、接着剤を必要としないいわゆるスナップフィット式となっており、これはボークス製のキットでも珍しい方式だ。初心者には、それだけでも嬉しい設計といえるだろう。

 組み立てそのものは、他社のキャラクタープラモデルを組み慣れている人であれば、そう苦労することはないはず。その気になれば一晩で仮組を完了することは難しくない。パッケージサイズはかなり大型で圧倒されるほどのものだが(それだけに満足度も高い)、特に外装パーツは大きめのものが多いのでパーツ点数は思ったほどではないからだ。

 また、パーツの精度が高く、勘合も申し分ない。その意味でも初心者には嬉しい。

 本キットは「アンダーゲート」という成型方式が多用されている点も特徴だ。これは、パーツとランナーを繋ぐゲートと呼ばれる部分(樹脂が流れ込む湯口でもある)がパーツ表面になるべく干渉しないように、パーツの裏など、完成後に隠れる部分にゲートを逃がす設計のことだ。

 詳しく解説すると、このアンダーゲートはパーツの表面に跡が残る影響を少なくするための処置なのだが、パテやヤスリなどの工具・マテリアルを使って表面処理をして塗装を行う上級者には、どこにゲートがついていようと関係ない(どのみち処理を行うため)。したがって切り出しに工程が増えるアンダーゲートは必要ないと考える上級者は多いのだ。だが、そもそもメーカーは、どちらかといえば上級者に配慮してアンダーゲート方式を採用しているのではないのである。

 初心者にとっては、ゲート処理をきっちり行わないとパーツがうまく嵌まらないなど、問題が発生することがあるため注意が必要なアンダーゲートだが、今回のように素組みで完成させるようなケースの場合、パーツ表面のゲート跡がほとんど目立たなくなるという利点が、最大限に発揮されるのだ。

 今回の作例で素組み(無塗装)を紹介するのはまさにこれを見せたかったからだ。写真で隅々まで確認してもらえれば、ゲート跡がごくごく目立たなくなっていることがよく分かってもらえるはず。つまり、アンダーゲートはむしろ初心者のことを考えて採用されている方式だということなのだ。

 また、パーツの分割も相当に練られていて、太ももの箱組みも合わせ目はパーツのエッジ部分に来るよう、独特の分割になっていて感心する。むろん塗装で仕上げる上級者にも配慮していて、塗装後に組んでも合わせ目の処理を必要としない箇所は多い。

 初心者に優しい、といえば成型色もそうだ。本体のメインカラーである青、そして関節部、バイザーや太ももなどの明るいグレー、武装などのグレー、細部の黄色、そして頭部の赤といった具合に、細かく色分けされている。素組みでも充分に設定のイメージに近い仕上がりになる。

 テスタロッサの場合はかなりこの点は重要で、上級者でも、後述する降着ポーズを取らせるような場合は無塗装の素組みモデルで遊びたい。気軽に手に取って、ポーズなどを研究したい場合もそうだ。素組みでもこれだけの完成度なら、満足度も高いというものだろう。

 ギミックとしては、全身可動、降着ポーズの実装、コックピットの再現、アームパンチ機構の搭載など、およそATが備えているアクション要素はすべて盛り込まれている。むろん、パイルバンカーもパーツ化されている。

■ヘビィマシンガンの砲身を支えるポーズ

 

パイルバンカー

 テスタロッサのアイデンティティのひとつともいえるパイルバンカーも見どころは多い。パイルの長さは1/24スケールでなんと20cm以上にもなり、強力な武装の説得力を見る者に与える。これとキューブのパワーで、一型装甲兵士の大群をなぎ払うのだ。

 アフターパーツとして、なんと金属製のパイルバンカーもリリースされる(真鍮挽き物。アイテム名は「メタルパイル」)。プラパーツのパイルバンカーでも存在感は余りあるほどだが、やはり金属製は男のロマン。価格も予価1,500円(税別)という驚きの低価格なので、併せて購入すべし。すでに組み立ててしまった、という人でも後から換装することは可能なので、安心されたし。なお、先が尖っているため怪我にはくれぐれも注意しよう(金属製ともなれば、ほとんど凶器だ)。

 シールド内側は、肩から繋がるパイプが軟質樹脂で再現されている。また、武装などオプションの固定用ラッチにもなるアイアンクロー風の爪も見える。今回、片貝氏により新規に武装のデザインが起こされており、キットにはミサイルポッドが付属する。

 また、作中ではビジュアルの具体的な描写がなかった「キューブ」についても、本キットではクリア素材の立方体として立体化されており、しかもパイルバンカーの基部へ装填することが可能となっている点も見逃せない。30年ぶりに稲妻が走る……ではなくて、30年越しに“謎”が解き明かされる興奮を味わってほしい。

■パイルはポリキャップで固定されているため、引き出して射出状態を再現することも可能だ

■パイルの長さは20cm以上もある。プラの成型でワンパーツ

■シールドの内側には武装のラッチを兼ねた近接格闘用のクローが見える

■本キットで実現したオリジナルのミサイルポッドを装着したところ

■ミサイルポッドの装備で、より戦闘力を増すテスタロッサ

■本邦初! なんとあの“キューブ”がパーツ化されている。作中通り、パイルバンカー基部に内蔵することができるのだ

 

細部

 頭部は従来のATと異なり、頭部の空間内にパイロットの頭が内包される構造ではない。パイロットは現代のレースマシンのようにフル・リクライニングの姿勢でシートに収まる。

 ボークスは今回、細かな設定を煮詰めるにあたってサンライズと協力態勢を取り、かつて「スコープドッグ21C」プロジェクトでメカデザインを担当した片貝文洋氏を迎えて検証を行っているが、頭部の構造を想起させる内部メカが内包されているなど、見えない部分にもこだわった設計となっている点も注目だ。

 本来、胸のハッチ周りのフチは黄色い塗装が施されている。この部分はデカールも用意されているが(今回は省略)、むろん塗装で仕上げるのもいい。

■後頭部から本体へと伸びるパイプも軟質樹脂で再現されている

■背部のジェネレーター部分は下部ハッチが開閉する

■腰アーマーの内側には、四角い把っ手(黄色い部分)の付いた投擲式のグレネード弾を内蔵

■右肘に付くシールドは、巧みな分割で積層構造を再現

■アームパンチ機構も再現

■ヘビィマシンガンのマガジンはスコープドッグのものに似ている

■ヘビィマシンガンのマガジンは上蓋を留め金で固定している構造が分かるディテールが施されている

■脚部のローラーダッシュ機構の構造も本キットの見どころのひとつ

■カカトのパーツが上がって内蔵の車輪が露出、さらに中央のローラーが下方に移動することでローラーダッシュの態勢に移行。つま先が地面から浮いて車輪走行が可能となる、実に理に適った構造だ

■脚部は降着機構を内蔵するため、内部フレームまでしっかりと再現されている

■スネの両脇に張り出した冷却機構を思わせるポンツーンは、上部に吸気口、下部に多数のフィンを持つ

 

コックピット

 本キットの目玉のひとつが、コックピット構造の再現だろう。ボトムズに登場するATの大きな魅力は、メカと人物の対比が、他作品の巨大ロボットたちと一線を画しているところでもある。だが、これを立体で再現しようとなると難しいもので、まず「ちゃんと人が乗れる容積があるか?」といったところから検証しないと、とたんに無理が生じることになる。

 監修するサンライズでもこのコックピット問題は重要視しており、人が収まるコックピットを持つ胴体ありきで設計を煮詰め、その容積から逆算しての全体バランスの確立、といった具合にリアリティを追求していった。

 コックピットハッチの開閉ギミックで特筆すべきは、襟ぐりの部分の処理で、ハッチ開閉に干渉する部分がハッチとは別の機構で持ち上がる構造となっているところ。メカニカル的な意味合いにおいても理に適っているし、なにより面白い。

 こうした細かな部分のアイデア及び基本構造の指定はメカデザイナー・片貝文洋氏の手腕に依るところが大きい。むろん実際に設計を行うボークスの努力の賜物でもあるわけだが、本キットではこのように組み立てていて「なるほど!」と感心させられる箇所が随所にある。ぜひ組み立てを通じて本キットの総合的な完成度の高さを味わっていただきたいものだ。

 よく、テスタロッサとボトムズ世界のATを対比して「ATはジープ、テスタロッサはF1」といったりするが、まさにレーシングマシンのように足を前に出し、深く寝そべるような姿勢で着座する様子が、完成したコックピットから窺える。

 本キットにケインのフィギュアは付かないが、アフターパーツでの発売が予定されており、立ち姿、着座姿勢のものがそれぞれリリースされるという。

■コックピットハッチの裏面には、手動でもハッチを開閉できるようにするための把っ手(ハンドル)が付いているのが見える。

 

降着ポーズ

 さらに、本キットの新機軸ともいえる大きな特徴が、「降着ポーズ」である。

 当初、ボークスでは降着機構などは考えずにモデル化することを企画していたというが、サンライズ側の強い要望などもあって“究極のテスタロッサ”を作り上げることを目指すことになる。この降着機構の考証・検証にも多くの時間が費やされたことはいうまでもないだろう。

 もともとテスタロッサは外観の設定画と、小説挿絵のデザインが存在しているのみで、降着機構があるのかどうか、といったところまでは実は小説内でも言及されていない。だが、テスタロッサもATである以上は、当然降着機構が実装されているだろうということは容易に想像がつく。サンライズも同じ見解だ。だが、言うは易しで、これを設計してプラモデルの立体の中に組み込むことは大変な苦労があった。

 関節の駆動部を含めた芯となるフレームを脚部に入れ込んだ上、それが引き出されるための機構を実装しなければならない。そして上半身が地面近くに降ろされるためには外装パーツの相互干渉をうまく処理する必要がある。さらには、降着ポーズとして成った姿勢が、変な表現だが“美しいか”どうかも重要だ。それらの条件をすべてクリアしたのが、本キットなのだ。

■長大なシールドは後方へ。足裏が地面に密着したまま腰部の下端が接地する。腰のフロントアーマーが降着のためにわずかに移動する機構が内蔵されるなど、細かな調整が施されることで、美しくまとまりのある降着ポーズが実現した

 これまでファンが外観から想像するしかなかったテスタロッサのすべてが、このボークスのキットでは理想に近い状態で現実化したといえる。ボークスとサンライズが行ったのは再検証でもあり、まったく新しい“創造”でもあった。

 もうひとつ付け加えるなら、架空の存在を現実化するための多くの検証と同時に、この作業部会ともいえる関係者の集まりにはモデラーサイドの人材も参加していたという。かつて“別冊”という書籍の形で本作品のATたちの作例を発表したことのある模型誌の編集者が、プラモデルを組み立てる側の人間として意見を出しているのだ。

 それは、例えば「赤い頭飾りをランナーを別にして必ず“赤”で成型してほしい」とか、「この部分はこのように分割した方が塗装する人は助かる」といった設計上の配慮へと繋がっている。

 それらを盛り込んでひとつのプラモデルパッケージとして完成させたものが、このテスタロッサなのだ。

 個人的な想いを語らせてもらうなら、この立体を見て「カッコいい」と興味を惹かれた人は、ぜひ原典である小説に触れてみてほしい(現状、新刊ではなかなか手に入らないと思われるが)。この美しく勇壮な機体を操る主人公は、エピソードを通じて精神も身体もボロボロになりながら戦い続けた男だ。

 不屈の闘志を持ち、最後は同族と生きるために戦ったケイン・マクドガルは、ベルゼルガ(凶戦士)であり、また同時にまぎれもなく気高さをもった騎士である。そんな男が最後に辿り着いた機体であるテスタロッサは、ベルゼルガの意匠を引き継いだ“最強”の青の騎士(ブルーナイト)だ。

 約30年の想い入れを胸に、この素晴らしいプラキットを手にできる喜びを分かち合いたいものだ。

 なお、オンラインでも購入できる。購入はこちらのボークス特設ページまで。

 


©サンライズ 協力:伸童舎
※掲載しました写真は開発中のため、実際の製品と異なる場合がございます。

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