T-REX 巨神ゴーグ製作に挑戦!キットに秘められた想いを読む

01.23.2013 · Category レビュー

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 T-REXというホビーアイテムの設計・開発を手がけるメーカーが、数多のディーラーがひしめくイベントに討って出た。会社名を背負って出展するという行為がどんな意味を持つか。ある意味では勇気ある行動といえる。だが「自分たちの技術のアピール」という名目以上に、このアイテムはモノへの「愛情」、そしてモノ作りへの「情熱」を感じさせてくれる。

 前回、この『巨神ゴーグ』のゴーグ&マノンタイプを紹介したところ、大きな反響があった。作品は30年近く前に作られ、今なお多くのファンが存在するが、決して製品化に恵まれた作品とはいえなかった。だからこそ、T-REXがガレージキットでこれを発売した時は、それに気づいたファンがキットを買い求めるためにブースへと急いだのだ。

 もちろん、アイテムそのものの完成度が高く、ファンのイメージそのものが形作られていたからこその反応である。2月に開催されるワンフェスでも販売されるので、欲しい人は買い逃しのないようチェックしておこう。

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■キットの外箱。横幅は20cm強といったところ。全パーツと組み立て図が入っている

 前回から間が空いてしまったが、今回はこのキットをより詳しく紹介していきたい。内部構造やキットの構成をお見せするためには、実際にキットを手に取り、組み立ててみることが早道だ。そこで今回は、T-REXのご厚意でサンプルを提供してもらい、組み立て工程を追っていく中で、キットの開発に注ぎ込まれたノウハウ、隠された工夫などを検証していくことにする。

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■ゴーグのパーツは、主としてABSレジンで成型されている

 ゴーグもマノンタイプも全身可動が再現されたキットとなっている。前身となった30cmサイズのモデルと同様、デジタル設計によるので、外形はそのまま18cmに活かされており、関節部分のみスケールに合わせて再設計されている。

 このキットの最大の特徴は、全身のほぼすべての主要パーツがABSレジンで成型されていることだろう。ABSレジンとは、素材の特性がABSによく似たレジンキャストで、通常のレジンに比べて非常に硬い。

 なぜこのABSレジンを採用したかといえば、「誰にでも組み立てられ、手に取って遊んでほしい」というT-REXで設計を担当する元木氏の願いが反映されているからだ。仮に誤って床に落としても壊れることがないほど、このキットは丈夫である。むろん、素材をABSレジンに替えただけでは実現しない。そこには設計の元木氏や、成型・量産を担当する工場の職人による、工夫と努力が不可欠だった。

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■関節に使用するパーツは、ABS成型のインジェクションパーツ(写真下)を使う。また、一部パーツの固定にはネジ、ワッシャーを使用するところもある。これは強度確保のためだ。別売りとなっている部品はホームセンターなどで揃えるといいだろう

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■関節の可動時に、外装が干渉するパーツは、柔軟素材(ゴムレジン)での成型とした。ABSレジンと色味が異ならないようにするため、何度もテストをしたという

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■腰回りの全パーツ。両端のアーマーがゴムレジンだが、ほかのABSレジン製のものと比べても色味が変わっていないのがスゴい

 では、解説図の通りに組み立てていこう。まずは腰からだ。

 組み立ての前に、全パーツを中性洗剤や離型剤落とし(リムーバー)などを使用して洗浄し、綺麗にしておくこと。用具や工程はほぼ一般的なキャストキットそのままと考えていいので、ここでは省略する。

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■矢印で示したのがゲート。ゲートとは湯口のことで、型に液体状のレジンを流し込む、あるいは型内部の空気を逃がすために設けられる。製法上、必ず生じる不要部分だ

 キャストキットにつきもののゲート処理を行っているうちに、あることに気づくはずだ。


 上の写真はリアスカートアーマーの一部だが、複数のゲートがあることが判る。ここで大事なのは、「ゲートがずいぶんたくさんあるなぁ」というところではない。すべてがパーツの裏側にあるという点だ。

 この部分に限らず、ゴーグのキットのほとんどすべてのパーツのゲートが、このように目立たない裏側に設けられている。カッターやヤスリなどで平滑にする際にも、表面の仕上がりを気にする必要がないのは素晴らしいことだろう。

 これは設計ではなく、多分に注型を行う職人の細やかな配慮や気遣いといったものに左右される。パーツの形状によってどのように型を作るか、そしてどこに湯口を設けるかは職人の経験と勘に依るところが大きいのだ。元木氏によれば、「少しでもコストが抑えられるのであれば(=販売価格を下げられるのであれば)、パーツ表面に湯口ができるのもやむを得ない」と考えていたとのことだが、このゴーグではむしろ注型業者が率先してこのような労力のかかる手段でより良い製品に仕上げてきたのだという。

 また、パーツのパーティングラインにしてもそうだ。基本的には上下2分割のシリコン型で注型するため、製法上分割ラインがパーツ表面に現れてしまう。だが、これもこのラインをなるべくパーツのエッジ部分に来るように調整されている。これも高度な技術と繊細な配慮が必要とされるところだ。

 作業の中で、キミもきっとパーツの美しさに感心することだろう。

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■腰部のメインパーツ。桁やダボ穴、別パーツを埋め込むスリットなど、まるでプラモデルのようなパーツだ

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■腰のメインパーツは、3箇所をネジ止めして強固に固定する

 腰回りは自重を支えるため最も頑丈さが要求される部位でありながら、同時に複雑な関節機構を内蔵するという相反する条件を満たさなければならない。したがって、関節構造などを組み込んだ後、左右の主パーツをネジ止めで固定する。

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■メインパーツの下部に、引き出し式の股関節を取り付ける

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■両サイドに軟質のゴムレジンのサイドアーマーを付け、前後のアーマーを装着すれば完成

 腰回りが終わってしまえば、あとはネジ止め部分も少なくなり、ひたすらパーツのゲート処理と球体関節による接合でスムーズに作業は進む。

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■関節に使用するのは汎用の球体関節パーツだ

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■頭部の組み立て。上の関節(6mm)を内蔵し、下部はネジ止めされて頸部が抜けないようになっている

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■腕部は、肩の関節からスタート。この球体関節はABSレジン製。ネジ止めで強固に接合される

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■腕部はゲート処理をしたパーツを、球体関節で繋いでいけば完成する

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■胸部の組み立て。胸腔にはグレーで成型されたシートが内蔵される

 ひとつ注意があるとすれば、素材がABSレジンであることだ。通常のレジンに比べて硬く、やや強めに力を加える必要があるため、デザインナイフなど刃物の扱いには充分注意してほしい。

 パーツを手に持ってゲート処理をする人もいるかもしれないが、ABSレジンのパーツは上の写真のように作業台の上に置いて動かないようにしておいて、ナイフの先で余分なところを削ぎ落とすようにすると効率がいいかもしれない(もちろんパーツは手でしっかり押さえる)。また、ゲートはなるべくニッパーであらかた切り落としてしまう方がいい。

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■背中のパーツの中に左右のシートをはめ込む

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■胸部のハッチは開閉式。ヒンジには1mmの真鍮線を通す

 胸部のハッチは開閉可能で、ヒンジ部分に1mm真鍮線を通す。設計の元木氏はとにかく「なるべく多くの人にゴーグを完成させて遊んでほしい」と願い、様々に工夫を凝らした設計をしているが、この部分はなんと最初から真鍮線を通すための穴が開けられている。

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 真鍮線を切り出して通すだけで完成だ。この1mmの穴をレジンキャストキットの成型法で歪みなく開ける技術力の高さに驚く。

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■完成したハッチを胸部に取り付ける

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■ハッチと胸部は隙間なく完全にピッタリと合う! スゴい精度だ

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■頭部と肩を組んでみる

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■脚は腕と同様にパーツを関節で繋いでいけば完成する

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■ついに全身ができ上がった!

 最近のメーカー製ガレージキットの進歩は凄まじい(もちろん、一般ディーラーの技術も向上しているが)。このゴーグも、なるべく合理化された関節とパーツ構造を持ち、さらに成型精度も高く、ストレスなく組み上げることができた。

 ガレージキットといえば気になるのが塗装の工程だが、幸いにしてゴーグはほぼ全身が青色であり、ラインに金色(黄色)や黒がアクセントとして用いられているに過ぎない。今回はまったく塗装などを施さない状態で作業を進めたが、実際このままでもゴーグのイメージに近い形で完成させることができた。

 購入した人はまず、ぜひとりあえず組み立ててみて、自由に飾ったり遊んだりしてみよう。このゴーグは組み立てた後も関節単位でバラバラにすることができるので、塗装や仕上げを後日に行うことも可能だ。

 次回は仕上げの工程を紹介するが、これもより設定に近づけるために行うもので、全身塗装は行わない。最低限の部分塗装に留め、なるべく簡単にイメージアップする方法を考えてみる。

 次回をお楽しみに!

ノンスケール フル可動 巨神ゴーグ(18cm)
イベントにて頒布 / 15,000円(WFにおける頒布価格)

©サンライズ
※掲載しました写真は実際の製品と異なる場合がございます。

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