【連載】T-REXの「巨神ゴーグ」、そのコンセプトは!?

12.05.2012 · Category インタビュー, レビュー

 

 前回、T-REXの『巨神ゴーグ』を紹介したところ、大きな反響があった。やはり名作というものはいつまでも人の心に残るものだ。今回は引き続き、このゴーグのガレージキットとしての魅力を紹介していきたい。 

 当マスターファイルブログでも、これまでいろいろなガレージキットのことを伝えてきた。造形から材料に至るまで、技術の革新にはめざましいものがあると感じる。

 今回紹介するゴーグはといえば、まずアイテムのコンセプトから話さなければならないだろう。というのも、設計を担当したT-REXの元木氏は、ガレージキットの中でも一風変わった特徴をこのゴーグに与えたのだ。それは、「誰にでも組み立てられ」「多少乱暴に扱っても壊れない」というものだ。


■ゴーグはT-REXが得意とするデジタル設計によって造形されている


■胴体部の構造。必要にしてシンプルなパーツ点数。胸部のコクピットや、その開閉機構も再現されている

 ガレージキットはご存じのように、プラモデルなどとは異なり、組み立てるのにやや特殊な技術を必要とする。現在はいろいろなハウツー本が出版されているし、道具を揃えて何度か経験を積めば充分にクリアできるものではある。とはいえ、プラモデルよりも難易度が高いことは否めず、また価格の高さから「失敗したくない」と感じてしまうことも無理からぬことといえる。

 元木氏は、まずこの組み立てについてのハードルを低く抑えられないかと考えた。パーティングラインや気泡の処理、そして「軸打ち」と呼ばれる強度確保のために真鍮線を通す作業、これをなくすだけでも作業は非常に楽になる。ここは設計の腕の見せどころでもある。関節部分は可動を確保しつつも、充分な強度を有する構造としているのだ。



■股関節にも工夫が凝らされている。奥にある軸で股関節軸を持つユニットを下げることで、モモを高く上げる際に腰アーマーになるべく干渉せず、自然なポージングとなる

 ゴーグを構成するパーツの素材だが、これは2つ目の「乱暴に扱っても壊れない」という点にも関わってくる。今話題の「ABSレジン」と呼ばれる高強度の特殊なレジンキャストを使用することとした。この素材はレジンでありながらABSのような特性を持ち、硬くて歪みが生じにくい。形状にもよるが、床に落としても割れたりしにくいのだ。硬化前の液体の性質上、あまり複雑で細かい形状の成型には向かないが、元木氏の理想とするゴーグを実現するには欠かせない材料といえた。

 元木氏の理想とするゴーグとは、飾っておくだけのディスプレイモデルではなく「ポーズを変えたり、手で持って遊んでも問題ない」という、いわば完成品として売っている「玩具」に近い。逆にいえば、完成モデルをバラバラのまま販売している形に近い。組み立て工程をユーザーに一任することで、価格を抑えることにも繋がっているのだ。

 幸いにして、ゴーグはボディに入っている金と黒(と赤)のライン、そして目の周り以外はほぼ単色だ。ボディ色をカラーレジン(色キャストともいう)で注型することで、塗装も最小限ですむ。

 パーティングラインや気泡の問題は、これは実際に注型を請け負うメーカーの技術や努力によるところも大きいという。特にパーティングラインについては、注型の型を作成する際、どこに型の分割ラインを定めるかによって、パーツ上にできるパーティングラインが決定されるからだ。

 元木氏によれば、注型メーカーの陰の尽力により、なるべく目立つ部分にパーティングラインが来ないように作ってもらえたという。極端な話、ユーザーはデザインナイフ1本と両面テープを用意すればいい。組み立てには接着剤すら必要としないのだ。


■これは試作品で、左から、腰アーマー、肩アーマー、マノンタイプの武器のチューブ、フトモモ前部アーマー。製品で軟らかいパーツとして作られる部分は、試作段階でも柔軟性のある素材で作ることが可能なのだ

 そのほか「ガシガシ動かして遊べる」よう、腰回りや肩口のパーツには軟らかいゴム的な性質を持ったレジンを使用することとした。飾るだけでももちろん美しいモデルとして成立しているが、プレイバリューという点において充分に配慮されたゴーグらしい「フレンドリー」さに溢れたアイテムなのだ。

◆ ◆ ◆

 そもそもガレージキットとは、大量生産では成立し得ない小ロットのアイテムを、それが本当に欲しいと思う人に複製して分け与える、という性質のものだった。ワンダーフェスティバルなどのイベントは、もともと趣味の範囲内でいわゆる「同好の士」とそうした交流を行うところがスタートである。

 需要と供給、そしてコストのバランスが釣り合っていればメーカーとして製品を定期的に作り、販売することが可能になってくる。世にあるガレージキットを扱うメーカーは、開発費と販促などにかかる費用を価格に反映させる必要があり、これはいってみれば当然のことといえる。

 T-REXのゴーグは、その意味では高度な技術力に裏打ちされたメーカー製キットとしての完成度を持ちながら、ガレージキットの原点に立ち返った、多分に趣味的なアイテムである。メーカーとしては、自社の技術力のアピールという名目はあるものの、活動そのものはあくまでも「個人」の範疇を出ない。それゆえに、ほとんど信じられないほどの安価で提供されているのだ。


■当初は今回紹介している、18センチのものとは別に、31センチサイズのものが作成されていた。サイズと価格、遊びやすさ、組み立てやすさ、またファンの手元に届くようにと、ブラッシュアップしつつサイズダウンしたものが作成されたのだ。上の写真は元になった31センチモデルの素組み状態

 ゴーグファンとしては、30年の刻を超えて甦る感動に心を振るわせつつ、この奇跡のようなアイテムの実現を喜びたい。

次回の更新は12月19日水曜日です。

ノンスケール フル可動 巨神ゴーグ マノンタイプ(18cm)
15,000円(WF2013冬販売予定価格)

©サンライズ
※掲載しました写真は開発中のため、実際の製品と異なる場合がございます。

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