【連載】注型技術で見るウェーブのバイファム:RCベルグの挑戦!

11.16.2012 · Category インタビュー, レビュー

 連載5回目となる今回は、ちょっと趣向を変えて、ユーザーの手元に届く最終的なアウトプットを担う、アイテムを製作・生産する「RCベルグ」の澁谷竜太郎氏にお話を伺ってみた。

 RCベルグはある程度、模型業界のことを知っていれば知らない人はいないといわれるほど有名な会社だ。ことレジンキャストキットの量産において、その卓越した技術とチャレンジャブルな精神で常に業界の最先端をゆくメーカーだ。

 その回答からは、現場でならではの深い知識と経験に基づいた興味深いガレージキットの奥深さが見えてくる。

◆ ◆ ◆

── それではまず、RCベルグさんの紹介からお願いします

 今回バイファムの複製依頼をいただきましたRCベルグです。弊社は、一般にはレジンキャストと呼ばれている無発泡ウレタンを使い、複製品を製作する業務を主業務としております。バイファムのようなガレージキットの量産から、完成品などの複製試作を始め、工業用製品の試作、量産、ワンダーフェスティバルなどのイベント用キットの複製などを行っております。

 これらの製品は、一般流通され玩具店で売っているようなプラモデルなどとは基本的に素材や成型方法が異なり、シリコン型の作成から材料の製品注入まで手作業で行います。このため、プラモデルなどのような大量生産製品というよりは、少量多品種の製品を作り上げていきます。

■これがバイファムの頭部パーツだ。(1)ランナーから部品を切り出したプラモデルのようにしか見えないが、まぎれもなくレジンキャストキットなのだ。(2)~(4)組み立てていけば完成!

 現在、ガレージキットという分野は、この十数年間くらいの間に塗装済み完成品の流れにより大きく変化してきたと感じています。この業界に携わっている多くの方は、自らの手でパーツを処理して、塗装・組み立ての工程を当たり前のようにできる方がほとんどだと思います。しかし、プラモデルの技術進歩や塗装済み完成品が溢れる中、自らの手を動かして、苦労しながら物を完成させるということから離れていってしまう時代背景があるように感じます。

 バイファムのようなガレージキットは、プラモデルに近い多色成型によって、組むだけでもある程度プラモデルのような立体物になります。本来は、購入されたお客様が塗る工程が必要だと思いますが、組んでもらうという一番最初の大事な意識を高めてもらえる製品も、この時代には必要だと感じています。特にこのバイファムにつきましては、様々な要素が含まれ、素材にも徹底的にこだわった作品であります。ぜひご購入いただき、手にとっていただければ嬉しい限りです。

■各部のパーツ。【左上】腹部。【右上】脚部のフレーム。【左下】足(ソール)。【右下】ABSレジンを使用したスリングパニアーの主翼

■プラモデルの成型方式では逆に厚みのある部品を作ることができず、必要以上に分割されることもある。また、金型の抜き方向の関係で側面にモールドが入れられない。しかし、ガレージキットであるバイファムのパーツでは難なくこれらの点をクリアし、クオリティの高いディテールを実現しているのだ

── ガレージキットの複製のための技術には、職人技といってもいい高度な技術が必要と聞きます。型を作る際に必要な作業の工程や、大変なところ、気をつけていることなどがありましたら教えてください。

 ガレージキットの複製には、色々な成型方法があります。昔ながらの方法では、機械を使わずに全て常圧(大気圧)の状態でレジンを注入していました。これは、現在でもイベントなどの参加される方の多くが行う方法です。

■バックパックのパーツ分割(左上が完成写真)。このバックパックはスリングパニアー装備時用で、跳ね上げ機構のないもの

 ただ、レジンというものには、プラモデルでは見られないような気泡という難敵が存在します。この気泡は様々な要因によって発生するのですが、常圧下での作業の場合、気泡を除くことは非常に難しいことです。これをいかに製品に残さず、また製品に残る湯口(注入口)をいかに最小限にできるかが、経験や技術の差になります。昔の製品に比べ、今の製品はこの常圧下での成型方法でも格段に進歩していると思います。以前は、気泡はあって当たり前の世界でした。しかし、逆に現在は気泡はなくて当たり前の世界になってきました。多くのディーラー様たちが、お互いに切磋琢磨しながらこの常圧での成型方法を改良してきた結果だと思います。

 では、私どものような「抜き屋さん」とよばれる複製業者はどうでしょうか? 高い生産効率や高品質の製品を生み出すには、残念ながら上記のような常圧下での成型方法では限界があります。気泡を最小限にするためには真空状態の環境が必須ですが、この環境を作るためには、様々な機械が必要になってきます。真空ポンプであったり真空槽などが代表的なものです。真空条件下で作業を行う成型方法を「真空注型」、あるいは類似していますが「真空脱泡注型」と呼ばれます。この2種類は厳密には異なりますが、常圧下でなく真空状態を利用するという意味ではほぼ同じといっていいでしょう。

■バックパック(跳ね上げ機構あり)は、下部の赤い外装の中にグレーのノズルをハメ込む完璧な色分け

■スリングパニアーのエンジンナセル。インテーク部分は四角い開口部から丸形の底部まで、内壁が滑らかな3次曲面を描いている点にも注目したい

 型に流し込んだ樹脂はこの真空環境によって、気泡を最小限に抑えることができます。ただし、この条件下でも気泡は発生します。これをさらに最小限にできるかどうかが、常圧同様に技術の差であると思います。これは個人的な意見ですが、常圧でも真空でも共通していえることは、美しい製品は美しい型から生まれるということです。いくら成型技術が高くても美しくない型からでは、それなりのものしか生まれないということです。「美しい型」という表現はかなり曖昧ですが、私どもの型作りの職人は美しい型作りができると思っています。

 美しい型というものはどういうものでしょうか? 例えば、シリコン型の表面が均一に真っ平らになっているか、パーティングラインは縒(よ)れていないか、シリコン型の合わせ用のダボは綺麗に配置されているか、型全体のパーツバランスが綺麗にとれているかなど多様な要素があります。


 また、この美しい型には、2種類のパターンがあると私は思っています。一つ目は、成型効率を考えた型。もう一つは成型効率よりも、一つ一つのパーツに対してユーザーにとって理想的なパーティングラインを徹底的に追求する型です。成型効率を考えた型が、パーティングについてまったく考慮していないかというと、もちろんそうではありませんが、どうしても生産効率を優先すれば妥協したパーティングになりやすくなります。これは、型を作る職人のタイプにもよります。同じ原型を使って違う人間に型を作らせた場合、異なる型やパーティングラインになります。人間が手がける作業ですからね。こういった点も面白いところだと思います。

 自分で自分の原型を複製する方は、複製作業も原型作りの一環であるという認識で複製作業を行ってもらえると、よりよい製品ができると思います。

── ガレージキットの成型には様々な方式があると聞いています。代表的なもの、あるいはベルグさんならではの技術、メカ系の注型に欠かせない技術、機器などがありましたらご紹介をお願いします

 これまでに説明した常圧注型や真空注型のほかにも成型方法があります。バイファムのように凄まじいパーツ数のロボット系製品を全て真空注型で行ってしまうと、ただでさえ高コストのものがさらに高いものになってしまいます。このコストを下げる要素をもつ成型方法が遠心注型と呼ばれる方法です。

■手首は基部に特殊なジョイントを使用し、広範な可動性を実現

■脚部外装。実際の組み立てではこの内部にグレーのフレームパーツが入る

 この方法は、シリコン型を丸くディスク状に作成し、遠心機とよばれる機械に装着して、遠心力と求心力を利用して成型する方法です。遠心分離器のイメージでよいかと思います。この方法の利点は、細かい多量のパーツを綺麗に効率よく成型できるところです。また、1日あたりに成型できる数が多いため、コストも下げることができます。ロボット系のパーツやフィギュアの小パーツに有効な方法です。

 しかしデメリットもあります。この方法で物量の大きい物を成型する場合、遠心力や型を抑える力により微妙な歪みが発生しやすいことです。これは、実際に成型されたパーツでキットを組んでみないと判りません。技術開発により、様々な改良がなされ、現在ではかなりこのマイナス要素は排除できているとは思います。ただ弊社では、組んでチェックをするまでの工程を人的に行うことは難しいので、物量の大きい製品は遠心注型は基本的に行いません。

 面白い成型方法では、回転成型という方法があります。例えばペットボトルを想像してみてください。これを普通に型取りして樹脂を流しこんだ場合、複製されるものは非常に重量のあるムクの(中身の詰まった)ペットボトルになってしまいます。実際のペットボトルは、基本的にまずプラモデルと類似した樹脂で金型を利用して成型されます。成型したものを型枠に入れ、熱を加えながら空気を入れて膨らまし、型に内壁に押しつけて最終的なペットボトルの形ができ上がりますが、こうした中空の物を私どもが使用するレジンで成型する方法が回転成型です。


 簡単な理屈ですが、注入口のないシリコン型を作ります。そこに少量の樹脂を流し込んで回転させます。そうしますと、製品の外側部分のみに樹脂がまわり、中空の製品ができあがります。この方法は、通常のレジンでは強度がもたないため、特殊な高強度レジンを使用し、自転と公転を制御できる機械で成型します。ガレージキットであれば、大きな怪獣のボディなどに使用します。他にも多々成型方法はありますが、大体このような方法が主なものだと思います。

【※編集部注】
今回説明していただいた成型についての解説は、RCベルグのサイトでも紹介されている。成型用機械の写真なども掲載されているので興味のある人は見てみるとより解りやすくなるかもしれない(RCベルグのサイト内「見積・成形」コーナーにて。アクセスはこちら

── バイファムの注型は大変な作業だったと思いますが、実際のところいかがでしたか?

 ウェーブ様からバイファムが届いた時の率直な感想は、正直「どうしよう……」でした。まず、パーツ数の多さに驚きました。通常、原型を見積もりする際、フィギュアはそれ程時間を要しませんが、ロボット系の見積もりは時間がかかります。これは、パーツ数が基本的にフィギュアよりロボットの方が多いからです。ロボット系の製品であれば、大体半日から1日で見積もりを作成します。バイファムは、まるまる2日かかりました……これ程見積もりに時間を要した製品は近年類をみません

 さらにパーツチェックで1日かかりました。パーツは、1パーツずつ形状と破損がないかをチェックします。この作業を数百パーツやるのですから、これは泣きそうになりました。また、この商品はご存じのように色つきレジン、いわゆるカラーキャストキットですから、指定色のパーツを間違えないように十分注意する必要もあります。

 2日かけて見積もりを作成して、また「どうしよう……」でした。企業努力が足りないといえばそれまでですが、とんでもない見積もりになりました。それでもウェーブ様は、最初からそれを充分認識していてくれたおかげでOKをいただけました。

■10色で構成されるバイファムは、色の再現性だけでなく素材の特性をも活かしきっている。「カラーレジンキャストキット」ではあるが、ある意味で「マルチマテリアルキット」とも呼べるスーパーガレージキットなのだ

── バイファムには一部に普段あまり使われない素材が導入されていると聞きます。その特徴や使用箇所について教えてください。

 このキットが高額になった理由は、ご購入いただければすぐに解っていただけると思いますが、まずパーツ数が多いこと、カラーキャストキットであること。そしてガレージキットでは珍しいのですが、レジンの素材が、通常のレジン、クリアレジン、ABSタイプのレジン、ゴムタイプのレジンの4種類もの素材から構成されていることです。

 ほとんどの方が、ABSタイプのレジンとゴムタイプのレジンは、利用されたこともなければ、存在自体も知らないと思います。素材に興味がある方はご存じかと思いますが、知っている方はその素材の扱いの難しさも理解されていることでしょう。

 ABSタイプのレジンという素材は、いわゆるABSに近い物性をレジンで再現した素材で、通常のレジンに比べかなり強い強度を維持します。例えば、通常のレジンでネジ加工をした場合、すぐにねじ山がたれてゆるゆるになってきます。このABSタイプのレジンでは強度が強い為、ねじ山は多少のことでも維持されます。このため可動ものであれば、関節構造に利用すれば非常に有効な素材となります。

 しかしながら、この素材は物性を高めるために、素材自体が非常にシビアになっており、成型方法がとてもに難しいものとなります。まず、通常のレジンにはない要素ですが、液の温度と型の温度をコントロールする必要があります。この温度設定がしっかりできない場合は、本来の物性が再現されなくなってしまいます。また、通常のレジンに比べ粘度が高いため、流動性が非常に悪い欠点もあります。型から製品を外すまでの時間も長く、不良率も高いことからコストが非常に高くなる素材です。一般的には、工業用試作やエアーガンなどの内部パーツに使用されます。この素材をガレージキットに組み込んだウェーブ様もすごいと思います。

 ゴムウレタンにつきましても素材の扱いにくさはABS同様です。また、このゴムウレタンの面白いところは、硬度を調整できることです。通常のレジンはA剤とB剤の2種類を混合して、熱硬化によって固まります。このウレタンゴムには、C剤というものがあり、この比率を変えることによって硬度調整ができます。基本的には、数字ではわかりにくいとは思いますが、硬度60~90の間で調整可能です。この素材もバイファムでは有効に利用されており(脚部のパイプ状パーツ)、非常に面白いキットになっていると思います

■シールドも2枚の貼り合わせで再現

── カラーレジンの色調整で難しい点や、工夫されているところなどがありましたら教えてください。

 サンプルを作成するうえで、最も苦労したことは色合わせでした。弊社では通常のカラーキャストであればほとんどの色は、指定された色にかなり近い色で再現できます。ただ、先ほど挙げたABSレジンなど特殊素材については厳密なカラーを再現することが難しい素材です。これらと通常のレジンを同じ色にしなければならない部分が非常に大変でした。

 注型自体、特殊素材もあることからかなりハードルが高い製品ですが、ご満足のいく製品を作り上げるよう精一杯頑張りますので、皆様なにとぞよろしくお願いいたします。

── ありがとうございました!

【(有)RCベルグ 代表取締役 澁谷竜太郎】
RCベルグ オフィシャルサイト:http://www.rc-berg.co.jp/

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 次回は、予約開始日に合わせて改めてバイファムの組み立て完成写真を掲載する。したがって、いつもと異なり11月26日の更新となるので注意。また、その後で塗装を施した完成見本作例もお見せする予定だ。塗装をしなくても充分に素晴らしい完成度のこのキットだが、果たしてプロフィニッシャーによる塗装作例がどのようになるのか? 引き続きマスターファイルブログの記事を楽しみにしていてほしい。

 

次回更新は11月26日月曜日PM12:00と日程が変更になります。

Exceed Enthusiast Elite バイファム
発売時期未定 / 価格未定 / 原型製作:毛利重夫(ウッドベル工業) / 1/100スケール カラーレジンキャスト製未塗装組立キット 全高約170mm

©サンライズ
※掲載しました写真は開発中のため、実際の製品と異なる場合がございます。

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