【連載】開発者に訊くウェーブのバイファム:デジタル設計・毛利重夫氏

11.09.2012 · Category インタビュー, レビュー

 

 ウェーブが発売を予定しているガレージキット「1/100 バイファム」を解析する連載は、今回で第4弾。キットの設計を担当した設計士であり造型師でもある毛利重夫氏にインタビューを行った。

 プラモデルにはプラモデルの、ガレージキットにはガレージキットの設計ノウハウというものがあり、素材や注型する型の性質などを正しく理解していなければ良い製品は生まれない。毛利氏がこのバイファムの設計に込めたものとは── ? さっそく紹介していこう。

◆ ◆ ◆

── まずは自己紹介をお願いします。

毛利重夫(モウリ シゲオ) 1971年生まれ。
 10年前から模型や玩具など3D CADにてメインに設計し、手がけています。

── 参考としてGA Graphicから提供した画稿を立体に起こすにあたって、読み取って解釈する過程でどういったことがありましたか?

 基本的には意匠はGA Graphic様からの画稿を再現するようにしました。
 設定に画かれていない部位などはウェーブ開発担当の方と意見交換し、アニメ設定にあるディテールを解像度を上げた形で再現したり、組み立て上出るパーティングラインにはパネルライン風の段差を入れさせて頂いたりしました。

■パーツの合わせ目を逆に利用し、ディテールに活かすという発想だ

 また、各所に翼端灯をイメージしていると思われるデザイン部位も有ったのでそのイメージで、部品構成し設計したのですが、部品サイズや商品構成的に別部品化は難しいと判断、後に一体化した部位もあります。

■パーツの分割は、必要性、生産性、組み立ての利便性など様々な角度からの検討を経て決定されてゆく。こうした点にも開発者の豊富な経験が生きてくる

 基本的には私から質問や提案をさせて頂き、ウェーブさんにご判断頂く形で進めました。

 設定画が細かく描かれていたことやウェーブさんの迅速なご対応もあり、あまり苦労した感はありませんでした。

── ガレージキットであるがゆえの設計の制約(難しかった点)などはありましたか?

 インジェクションキットと違い、製品や型の強度が違うため基本肉厚をプラモデルの1.5倍くらいにしたり、シリコン型では型強度が出ない部位などは、あえて肉厚にしたりして対応しました。

 あまり肉厚にすると重量の増加やギミックを入れるスペースが取れない、部位によっては形状にシャープさが失われる(スリングパニアーの翼等)がある為、部位によって設計方法を変える必要はありました。

 翼などは形状の関係もありますが、肉厚を均一ではなく変化させて形状と強度を両立させていたりします。
 プラモデルの設計でもあることではありますが、より多い部位で行いました。
 コア(部品の裏側)では、プラモデルの設計より多く抜きテーパーをつけたり角を丸めて、型の負担を少しでも軽減するよう心掛けました。

 また、ウェーブさんからの提案で部分的に高強度の特殊レジンを使用し製品化出来た部位もあります。

■ウェーブ側からも形状やディテールについて意見が寄せられる。ここに掲載したのはごく一部だが、デジタル設計ではこうした綿密なやり取りが短時間で反映される。より良いキット開発に大きく貢献するのだ

── スリングパニアーのインテーク部分やノズルに現用航空機のような意匠が見られますが、ディテールの面で気をつけられた点、または参考にしたものなどがあれば教えてください。

 ここの部位に関しては、頂いた設定画、アニメ設定画共に詳細がないため、『大気圏での使用を前提とすれば、ジェットエンジン』と考え、現用航空機のイメージで空気導入口やタービンブレードを、またノズルに関しても設定画基準のパーツとは別にF110エンジンをモデルとしたディテールのノズルをウェーブさんに提案させて頂きました。

■実在の工業製品からのフィードバックは、架空のメカに“現実感(=リアル)”を付与する重要な要素となる(※公開に当たり、画像の一部を加工しています)

 アニメのメカではありますが、現在存在するメカのディテールで“らしさ”を出せればと形状が不鮮明な部位には提案させて頂くこともあります。

── 組み立て工程への配慮や工夫した点などはありますか?

 塗装した場合にマスキングをあまりしないで済むよう心掛けて設計しています(近年のプラモデルでは一般的ですが……)。

 ヒジなど、形状、部品の大きさ、強度等で出来ていない部位もありますがヒザなど、塗装後にヒザ関節へモモやスネを組めるように設計しました。

 関節部品をモモなどで“挟み込む”形で設計するほうが設計としては楽なことが多いのですが、私自身、趣味で模型を作る時に“挟み込み”で設計されてる物は作る上で(改造や塗装時)ストレスに感じるため、できる限り “挟み込み”は排除したいと思って設計します。

■脚部の最終組み立て工程。なるべく塗装した後に組み上げることが可能な分割を採用している。ちなみに、デジタル設計はこうした解りやすい組み立て説明書の作成にも威力を発揮する

 メーカー様の都合上出来ない時もありますが、今回のバイファムは基本的には任せて頂けました。

 また、ガレージキットによくある真鍮線による部品の接続をしないようにしました。

 一応、真鍮線を一切使用しなくても完成しますが、強度的に不安な部位には(ビームガンのバレル等)真鍮線が打ちやすいようにダボ穴とピンのセンターに浅い凹をモールドしました。

── 造形の見どころや、組み立てる工程の中で味わってほしい部分などがあったらお願いします。

 外観に関してはGA Graphic様からのリファインデザインをとことん追求しましたので、後日発刊されるであろう書籍と見比べて頂き、解像度の高い【バイファム】を楽しんで頂けたらと思います。

 また今までのガレージキットに比べ、プラモデル的な感覚で組めるキットになっているはずですので「ガレージキットはちょっと組み立てが……」という方にもチャレンジして製作頂ければと思います。

■スリングパニアーの保持位置も慎重な調整が行われた。当初はシンプルな構造のアームだったが、この検討により可動部を持った伸縮式アームを採用したこととし、「固定式」「可動式」の2種類のパーツが用意されたのだ

── 最後に、バイファムファンに向けてひとことお願いします。

 当時のプラモデルもデキが素晴らしかったのですが、負けない気持ちで設計にチャレンジしました。
 バイファムと言えば“あの”ポーズも極力違和感のないようにとれるようギミック設計も頑張りました。
 是非、あなたのバイファムコレクションに加えて頂ければ幸いです。

── ありがとうございました!

◆ ◆ ◆

 今回のインタビューで、デジタル設計の緻密なやり取りと、細やかな配慮による形状、ディテール、組み立てやすさの実現といった工程を垣間見ることができたのではないだろうか?

 次回はこのキットを製品として成立させるために重要なパート、注型を担うR.C.ベルクにお話を聞くことにする。一般にはあまり知られていない技術を駆使するガレージキットの生産現場では、バイファムのキットを作るためにどのような作業が行われているのか? お楽しみに!

 

毎週金曜日、PM12:00更新 次回更新は11月16日 PM12:00!!

Exceed Enthusiast Elite バイファム
発売時期未定 / 価格未定 / 原型製作:毛利重夫(ウッドベル工業) / 1/100スケール カラーレジンキャスト製未塗装組立キット 全高約170mm

©サンライズ
※掲載しました写真は開発中のため、実際の製品と異なる場合がございます。

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