【連載】ウェーブのバイファム徹底解説:斬新な設計手法

10.26.2012 · Category インタビュー, レビュー

 ウェーブが発売を予定している「1/100 バイファム」を解析する連載の第2弾は、製品の開発コンセプトを中心に紹介していく!

写真!

 第1弾の紹介記事の設計中画像を見て、恐らくピンときた人もたくさんいるのではないだろうか。そう、これらの画像は最近のメーカー製モデルの開発で見かける3D CADの画面写真である。──「なんだこれは? ガレージキット……だよな?」

 これが今回ウェーブが企画するバイファムの、最大のポイントだ。従来のプロの造型師による原型を型取りして複製するガレージキットの製品化工程のうち、原型の部分の製作方法を根本から変えており、3D CADによるコンピューター上の設計に置き換えたのだ。これはガレージキットというよりもメーカー製プラモデルの設計に近い。

■バイファムは完全にデジタル化されたデータを元に立体化されている。CADデータ上で納得が行くまで形状の煮詰めができるのもデジタル製作のメリットだ

 むろん、現在ではウェーブ以外のメーカーや巷間の個人ガレージキットディーラーが同様の手段を用いている例もあるかもしれない。正確にいえば、ウェーブでも実は『バーグラリードッグ 黒い稲妻旅団仕様改造パーツセット』の改造パーツの開発において、この手法を初めて試している。しかし、キットの設計すべてをこの方法で行ったのは今回が初となる。

 設計を担当した毛利重夫氏は、複数のメーカーでプラモデル開発に携わり、豊富な経験を持っている人だという。また、自分の手による造形ができる造型師でもある。彼は、培ってきた技術を駆使してキャストキットの常識を越える設計に挑戦したのだ。

■バイファムの胸部分解図(ポリキャップ部品含む)。何度も説明しているが、紹介しているのはプラモデルではなくキャストキット製作用のCADデータだ。従来では考えられないプラモデルライクなパーツ構成に「キャストキットだけれども俺にも作れそう!」とワクワクするのだ

 写真を見ていただければ一目瞭然だ。従来、キャストキットというものは中身までレジンキャストが充填された無垢のパーツというのが常識だった。しかし、このバイファムでは驚いたことに内部がプラモデル同様くり抜かれ、強度確保のための桁材を有し、さらにはダボ穴によって組み立てる構造になっている部分もある。そのため、キャストキットとしては見た目の想像よりもずいぶんと“軽い”のだ。軽いということは関節の保持にしても、材料コストにしても有利であることはいうまでもない。

 今回のバイファムは、キャストキットというより組み立ての感覚はプラモデルにごく近いという。もちろんポリキャップなどを使用して関節可動もバッチリだ(この辺りは素材的な新機軸もあるので、次回詳しく紹介する)。1ついえるのは、本キットにおけるパーツ形状と分割の複雑さは、これを原型師が手で作ったとしたら、不可能とはいわないが恐ろしく手間と時間がかかって現実的ではないだろうということ。その上で、10色のカラーレジンを使って「塗装」という難易度の高い壁さえもクリアした。ガレージキット初心者でも、恐らくこのバイファムは組み立てることができるはずだ。そこが画期的なのだ。

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「ここまでするのだったらプラモデル製品として作れそうじゃないか」と思う人もいるだろうが、そこにこそまさにこのバイファムがガレージキットであることの理由が潜んでいるといえる。キャストキットはシリコン製の型を使い、遠心と真空脱泡による成型を行う。低コストではあるが型は負荷に弱いため量産には向かない。金型を使用するプラモデルは、熱した樹脂を超高圧で型に流し込むことができるため、薄く成型でき、型そのものも頑丈で量産できることが利点である。しかし、金型というのはとんでもなくお金がかかる(モノにもよるが家が一軒建つくらい)。だからこそ製品としてはなかなか成立しにくい。

 そもそもガレージキットというものは、少数のそれを欲しいと思う人にワンオフで作ったモデルを「複製」して分け与える趣味の世界のものだった。ウェーブのバイファム登場の真の衝撃は、その原点を思い出させてくれると同時に、この「選ばれた自分たちだけの世界」の限りない発展の可能性を示唆するものである、という点を今ここで改めて強調したいと思う。

 どういうことか? 驚くべきはその設計速度の早さで、バイファムは企画開始から半年でテストショットの完成にこぎ着けている。従来のやり方では、特にメカ系モデルは原型の完成までに1年かかることも珍しくなかったのだ。3D CAD設計の特徴はこのスピードと、「リテイク」が比較的容易な点が特に優れているといえる。極端な話だが、バランスの調整を行う際に「頭を一周り小さく」などという修正は、以前であればほとんど「作り直し」を意味していた。バイファムで採用した新しい設計手法では、形状やギミックの煮詰めをより積極的に行えたのである。

■肩部だけでも、なんと19個の細かなパーツで構成されている。色分けと可動を両立させた分割だが、プラモデルのような組み立てやすさも実現している

 今回見出された「変革」は、メーカーにも消費者にも画期的なことだといえる。なぜなら、これまで主としてコストと需要の問題で世に出なかったモデルが、製品として日の目を見る可能性が高まるということだからだ。

 ウェーブで企画を担当する永見氏は、「製品の性質上、ある程度高額になってしまうのはどうしても避けられない。だったら、中途半端なものを作っては申し訳ない。妥協をせず徹底的に良いものにして、購入してくださった方に絶対に満足してもらえるものを作ろうと思いました」と語る。

 この言葉通り、パッケージには可能な限りの要素が盛り込まれた。現代風にリデザインされた外観はもちろん、胴腔内のポッド収納ギミック、スリングパニアー装備、劇中で使用されたジェイナス号外鈑を利用した即製シールドなど、「バイファムといえば」と思いつくすべてが入っている。また、素材も吟味して可動や成型上の課題を克服すべく、幾つものトライを行っている点も見逃せない。

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『銀河漂流バイファム』は作品の初放映から来年で30年を迎える。この節目の年に、このような素晴らしい製品が誕生したことをまずは喜ぼう。次回は製品仕様をより詳細に解説する!

 

毎週金曜日、PM12:00更新 次回更新は11月2日 PM12:00!!

Exceed Enthusiast Elite バイファム
発売時期未定 / 価格未定 / 原型製作:毛利重夫(ウッドベル工業) / 1/100スケール カラーレジンキャスト製未塗装組立キット 全高約170mm

©サンライズ
※掲載しました写真は開発中のため、実際の製品と異なる場合がございます。

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