戦艦大和のふるさとを尋ねて~呉市大和ミュージアム訪問記(1)

03.12.2012 · Category レビュー

写真!

 2012年3月某日、GA Graphicの編集員の1人である僕は、広島県呉市の駅に1人降り立っていた。折しも広島地方はこの日、朝から雪のちらつくあいにくの天気。だが、僕の胸は軽い緊張と高揚で高鳴り、その寒さを感じずにいた。


【※このページは、旧GA Graphicサイトに掲載された記事の再掲です。】


 呉といえば、第二次世界大戦中に旧日本海軍の拠点があった場所だ。現在でも造船・鉄鋼など工業で知られる港町で、特に金属ヤスリは全国の95%の生産量を誇る。

 ここに来た目的は、察しのいい人ならばすぐに分かっていただけることと思う。「呉市海事歴史科学館 大和ミュージアム」への来訪だ。そう、この呉は戦艦大和が生まれた街なのである。ここには、1/10スケール(全長26.7m!)という途方もない大きさの大和の模型が展示されている。一度はいつか行ってみたいと思っていた。いわゆる最近流行の“聖地巡礼”のようなものだといっていい。

■旧日本海軍の拠点の1つであり、海軍力を支えた産業の街・呉(くれ)。戦艦大和はここで誕生した。大和ミュージアム(右写真)はこの地で後世にそれを伝えている

■大和ミュージアムの外観

 首都圏在住の人の中には、僕と同じようにこの大和ミュージアムに行きたいと思っている人もたくさんいるのではないだろうか。だが、実際に行くとなると、中国地方にある呉はなかなかに遠い。実際に訪問して感動を得た身からいわせてもらえば、ぜひとも皆さんにも直接足を運んでもらいたいとは思うのだが、どうしてもそれができない人のために、今回は大和ミュージアムさんのご厚意で豊富な写真を掲載し、当ミュージアムの内容を紹介してみたい。



一路、呉へ

■呉駅の構内

 まずは旅程の紹介をしよう。今回は完全に一人旅であるが、ぶっちゃけると帰省の途中で寄る、という形をとったので、片道だけ参考にしてほしい。東京からはパターンとして「飛行機」「新幹線」などの手段があるが、今回の場合は明るいうちに帰省先に到着したかったために、できれば昼前には呉に着いておきたかった。飛行機と新幹線を比べると、実際には所要時間はわずかにしか違わない(空港への道のりが意外とかかる)。最近の新幹線は速くなったものだ。早朝始発で行けば昼前には着けるが、ここはあえて第3の選択肢として「夜行列車」を使うことにした。

■サンライズ出雲の個室内。2階の部屋は天井まで窓面があるので、横になって星空を眺めることもできる

 シーズンにもよると思うが、今回は運良くシングルの客室が取れたので、寝台特急「サンライズ出雲」で岡山まで行き、そこから新幹線で広島、さらに鈍行で呉へと辿るプランを立てた。お金はそれなりにかかるが、寝台特急もだんだん姿を消しつつある昨今、せっかくの機会だから乗っておくのも悪くないと思ったからだ(実際、帰省中に寝台特急「日本海」のラストラン、というニュースも見た)。

 20数年前にも一度上京するのに寝台列車を使ったことがあるが、周囲に気を使わなくて済むシングルの客室は、それに比べればかなり快適だった。列車の揺れの中、ぐっすり眠れるかどうかが心配だったが、案の定トータルで3時間程度しか眠れなかった。しかし、これも経験だし良い思い出だ。

■呉市に到着。3月半ばではあったが、この日は雪がちらついていた

■駅内にある呉市内の観光案内板

■広島県はNHKで放映された「平清盛」に縁の深い厳島神社と、この厳島神社とともに世界遺産に登録された原爆ドームがある。宿を取って、ゆっくりと大和ミュージアムやこれらを観光して回るというのもいいと思う

■開館前に大和ミュージアムに到着

 呉を目指す電車の車窓から、港の街であることを示すクレーンが立ち並ぶ様子が見え始める。あえて選んだ10時間以上に及ぶ長旅を経た後では、感慨もひとしお、というものだ。開館時間の30分ほど前に現地到着。取材を開始した。

■館前には戦艦陸奥の主砲身などが展示されている。写真の右奥に見えている潜水艦は、「てつのくじら館」という海上自衛隊呉史料館



圧巻の1/10戦艦大和

 入り口から入ってすぐの吹き抜けになったホールに、“それ”は鎮座していた。

■感動の対面。想像していた以上に艦体は大きく、細部の精密さとの対比が際立つ

 1/10スケールがいかに大きいものであるかは、写真からでもおおよそ感じ取ってもらえることと思うが、やはりその場で実物を見ると圧倒される。2011年末にタミヤからリニューアルされた1/350 戦艦大和のプラモデルが発売されたが、その精密さを上回る、スケールに見合った作り込みはさすがというほかはない(逆に、この1/10模型を見たことによって、タミヤのプラモデルがいかに素晴らしい完成度なのかもよく理解できた)。

■人が造り、人が乗り戦った戦艦大和。ミュージアム館内の展示物を観覧した後に改めてこの模型を眺めることで、その偉大さを深く噛みしめることができる

 プラモデルなどの小スケールモデルだと、船体の様々な構造物についても、あまりに小さくなりすぎるものは形を省略せざるを得ない。逆に、だからこそ腕に覚えのあるモデラーは大量生産のプラモデルを元に、省略された細部をハンドメイドという手段でもって改造を施すし、その“余地”がスケールモデルの魅力にも繋がっているといえるのだが、1/10スケールともなるとその大きさゆえに、省略されずに現れるディテールがハンパじゃないのだ。

■後方からのビュー。大和は前方から見ても素晴らしいが、後ろ姿もまた勇壮だ。大和ミュージアムでは、あらゆる角度から戦艦大和の全景を存分に見渡すことができる

 1/10でなら再現可能だが、1/350まで小さくなると物理的に表現不能な細かな部分というのも確かにある。最近は金型技術の向上で超絶に精密な対空機銃などが売られているが、それ以外にも小さいパーツは船体に無数に点在しているし、限界も必ずある。1/10戦艦大和は、小スケールモデルが絶対に到達できない領域まで作り込まれているのだ。

 また、細部だけでなく、面の巨大さもそうだ。大きいからこそ得られる質感というのもある。大きく作ること以外では決して表現し得ない。特撮映画などでは昔から光のコントロールや塗装などでミニチュアを巨大に見せる工夫をしてきたが、なるべく実物に近づけた大きさで作ったものにはどうやったって敵わないのだ。僕は以前に船の科学館に飾られていた映画「連合艦隊」の撮影に使用された1/20の模型を何度も見ているが、作り込みの点でも迫力でも、単なる数字上の「2倍」を超える迫力を、この大和ミュージアムの1/10戦艦大和から受けた。

■巨大な物体の表面のわずかに波打つ表面は、小さな模型ではなかなか表現の難しい独特の質感を呈する。普通のデジカメで撮影しても、パースの効いた迫力のある画になるのがスゴい

 館内には学芸員のほか、ボランティアで多くの地元の方たちが説明員として来場者に解説をしてくれている。その中の1人にお話を聞いたところ、自宅で戦艦大和の造形に挑戦している趣味人などは、何度も足繁くこのミュージアムに通うのだという。「この部分のディテールが分からなくて」といっては、その都度写真を撮って資料とするのだそうだ。

 我々首都圏の人間の場合、何度も足を運ぶというのはなかなか難しいが、一度は目にしておいた方がいい。

 今回は戦艦大和模型の全景を中心として紹介した。次回は1/10スケールならではといえる圧倒的に作り込まれた細部の写真と、館内外の見どころなどについて解説する。


第2回レポートはこちら

 


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※取材協力:呉市海事歴史科学館 大和ミュージアム
※館内の展示物については、許可を得て撮影しています。
※このページは、旧GA Graphicサイトに掲載された記事の再掲です。

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